(M3b#001スターリングエンジンの製作と活用)

M3b 安間丈人  伊藤大晟  岩本晟海  河西渉大

  治部唯人  福井香里  松下季加

①研究目的

 自分たちでエンジンを作りたいという思いから、様々なエンジンを調べる中でスターリングエンジンを知った。スターリングエンジンは、構造が比較的簡単であることから自分たちでも製作できるのではないかと思い、製作・実験を行おうと考えた。

②製作過程

  • 設計・製図

 スターリングエンジンの設計は、とても難しい。そのため、インターネットの図面をもとに調整を加えるだけにとどめた。具体的には、入手可能なベアリングに合わせた軸受けや台の寸法変更、加工が困難な部品の改善である。そして、CADを利用して図面をおこした。  

  • 部品加工

全20個の部品を1人につき2、3個ずつ担当し、加工作業を行った。加工では、のこ盤や旋盤、フライス盤、ボール盤、マシニングセンタ、レーザー加工機などを使用した。加工精度について、ピストン部では3/100㎜、ベアリングが入る部分では、5/1000㎜の精度が必要になる。また、旋盤でのねじ切り加工やフライス盤でのエンドミル加工、穴あけ加工は実習で習わないため、練習してからエンジン部品の加工に入った。                                

  • 組み立て

 図面の通り組み立てたが、エンジンは動かなかった。その原因は、空気漏れであったと考えられる。これのさらに細かな原因を調べるために、石鹸水を用いて空気漏れ検査を行った。その結果、部品の合わせ面やピストンとシリンダの隙間から空気が漏れていることが分かった。それらのことが起こることにより、ピストンに圧力が加わらずエンジンが動かなかったのである。その改善策として次の3つを挙げる。(a).ピストンをさらに高精度に加工する。(b).シール剤を塗る。(c).ピストン部に油を注す。これらの改善を加えた結果エンジンが動くようになった。

③実験

実験1 「エンジンにかかる負荷と作動時間の関係」

 スターリングエンジンは、空気の温度差によって作動している。そのため、長く加熱した120秒の方が60秒より長く作動すると予想した。実験では、フライホイールに鉄球などのおもりをのせ、フライホイールとおもりの間になるべく摩擦が起こらないように負荷をかけた。具体的には、負荷を50g~200gまで50g間隔で変化させ、その時の作動時間について調べた。また、加熱時間が60秒、120秒で違いがあるのかについても調べた。その結果を下記に示す。

 この実験から、60秒、120秒ともに加熱した時の負荷が50gずつ増加するごとに作動時間が約1分ずつ短くなった。このことから、加熱時間と作動時間を足すと60秒、120秒加熱した時、ともに近い値になると考えられる。

・実験2 「負荷を100gかけた時の作動時間」

 実験1では、予想と逆の結果になった。そのため、負荷を100gかけた時の作動時間を調べ、加熱時間と作動時間の合計を確かめることにした。

この実験から、加熱時間と作動時間の合計は同じくらいの値となり、平均すると4分13秒になった。

・実験3 「シリンダヘッドの表面温度変化による回転数・作動時間の違い」

参考実験として、シリンダヘッドの表面温度を約600℃、750℃にした時、無負荷状態での回転速度、作動時間の違いについて調べた。表面の温度を確認するには直接測定することが理想であるが、本校にはその装置がない。そのため、加熱した材料の色で判断することにした。また、炎の温度が約300℃であるアルコールランプでも実験を行った。その結果を下記に示す。

 回転速度[rpm]作動時間
300℃    0     0
600℃8643分34秒
750℃9604分12秒

・実験4 「ディスプレーサシリンダの低温側を冷却した時の回転速度、作動時間の違い」

 ディスプレーサシリンダの低温側を冷却することで、シリンダ内の温度差が大きくなり回転速度が速く、作動時間も長くなると考えた。今回は、冷却方法として氷を用いり実験を行った。その結果を下記に示す。

 回転速度[rpm]作動時間
氷なし9604分12秒
氷あり   9607分以上

 この実験から、氷を置いたことによって、回転速度に変化はなかったが、作動時間は大幅に増加した。これによって、シリンダ内の温度差が保たれ、エンジンが作動に適している条件が保持されていると考えられる。

④考察

 実験前は、長時間加熱するほど作動時間も長くなると予想していた。しかし、実験から、シリンダ内の温度がある一定の温度になるとシリンダ内の温度差がなくなり、エンジンが動かなくなるということが分かった。また、ガスバーナーによってシリンダ全体が熱せられることで、温度差がなくなることもエンジンが動かなくなってしまう要因の1つだと考えられる。本来は、熱延対などの測定器を用いてシリンダ内の温度を測定することが望ましいが、測定器が本校にないため測定ができなかった。その温度は、材質が鋼であること、シリンダ内の体積から考えると、約600℃であると推測した。

スターリングエンジンの性能をさらに向上させるために改善点を3つ挙げる。(a).冷却フィンの表面積を増やして放熱効果を高める。(b).ディスプレーサシリンダの低温側を冷却するために、氷水を入れる容器を取り付ける。(c).コンロッドとピストン、フライホイールがつながれている部分の摩擦を減らす。

⑤参考文献

 「スターリングエンジン設計図集」

http://www.tcp-ip.or.jp/~ishida96/index.html

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